ルーブル美術館展

実家で部屋をいじっていると海老沢泰久の「美味礼参」がでてきたので再読した。
最高の素材を、能うる限り最高の調理方法で仕上げても僅かな欠点に
気づいてしまい、料理を純粋に楽しむことができなくなった
至高の美食人・辻静雄をモデルにした小説である。
思うに、食であれ、美術であれ芸術という道の求道者たるものは
常に高みを目指す故に、現状に満ち足りることない存在なのかも知れない。




横浜美術館で行われているルーブル美術館展を見てきた。
直接見るのは全て初めての作品ばかりなのだが、
なるほどなという感動の薄い印象が大半をしめた。
ただ、フランソワ・ジェラールの「プシュケとアモール」は
強烈なインパクトを伴い目に飛び込んできた。
プシュケの表情もさることながら、その透き通る通るような白い肌の
神々しく、そして官能的なまでの美しさに息を呑み
しばし時間の経過を忘れて立ち尽くしてしまった。


こうした時、いつも自分の語彙の不足を痛感するのだが
仮に百万言の詞を自由に操りそれを費やしたところで、
プシュケの美しさを遺漏なく伝えることはできないー
瑕瑾が一片もない完全な芸術を、詞で語ることがそもそもの間違いなのかも知れないが
その高みへ少しでも近づきたいと思う。



美味礼賛

美味礼賛