- 作者: ディック・フランシス,フェリックス・フランシス,北野寿美枝
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/05/10
- メディア: 文庫
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長年にわたり競馬界関連のコミュニティを
題材とした極上のエンターティメントノベルを
提供していたディック・フランシスがなくなり数年がたった。
未だシリーズ作すべてを読了していないが
シリーズ作がこれ以上増えないという現実は
寂しさ以外の何物でもない。
執筆のパートナーを妻から次男のフェリックスに変え
活動を再開し、小説のクレジットが共著となって二作目が
本作の「審判」である。
主人公のジェフリー・メイスンは、
英国のアマチュアジョッキーにして法廷弁護士である。
プロジョッキー、スコット・バーロウが殺害され、
その容疑者として逮捕されたジョッキー仲間の
スティーブ・ミッチェルの弁護を引き受けるが
暴漢に襲われ、裁判でわざと負けるように脅迫を受ける。
本作の主人公ジェフリーは
従来の競馬シリーズの主人公のような不屈かつ
確固とした正義を振りかざすヒーローとは程遠く
暴力の的となることをおそれる非力なエリートといった趣で
事件の弁護活動を続ける。
しかし、暴力の恐怖に懊悩しながらも真実を追求し
真犯人と騎手殺人に込められたとき事実に辿りついた時、
主人公の逆襲が開始されるー。
従来のシリーズヒーロー像と一線を画しつつも
「正義」を貫く代償とカタルシスを描く根底は揺るがず
読後にはこれまで同様の充分すぎる満足感が残った。
本当にこのシリーズ新作が読めないのが残念である。