She's a maniac


洋楽雑記帖 A Notebook Of Western Music <1983年1位-11>Maniac/Michael Sembello

現在では「マニアック」という言葉は完全に一般化し、ある嗜好を持つ人の中でも更にコアなものを求めている人を指す場合に使われるが、1983年当時はまだそうした概念ができあがっていなかった。おそらく「マニアックですねぇ」という会話が成立するのは、オタク層の行動パターンが文化になり始めた1980年代中盤以降からではなかったかと思われる。というのも、この曲がヒットチャートに入ってきた頃、私は受験生でありながらこの単語の意味がわからなかった為、慌てて辞書を引いたものの、そこに「躁病患者.」や「狂人」と書かれていてびっくりした記憶があるからである。今では「フェチ」でさえ場合によっては肯定的に使われることを思えば、本当に隔世の感がありますねぇ。


先日、20年ぶりに見た映画「フラッシュダンス」の場面。
一流のダンサーを夢見るアレックスが、自宅のフロアで一人で踊る様は
今見ても強烈な印象をともなって心に響く。
マイケル・センベロの「Maniac」のビートに併せるかのように
激しくも美しいステップを刻むダンスもさることながら、
「足に魂を込める」とでも言わんばかりに
足にテープを巻いてそれを確かめる仕草に
この映画の熱さを感じる。



ダンスに限らず、何かしらの準備の際に
自分の肉体を含めた道具ギアなりツールに
思いを込めるといった類の光景をよく目にする。
時としてそれは演技者やアスリートの決意を
百万言の言葉より雄弁に物語っていることがあり
まるで神聖な儀式のように静謐で美しいとすら感じることがある。



この曲と思い入れの場面を見ながら
トップの人間というのは、狂人と紙一重、あるはその領域まで
決意して踏み込める類の人種なのではないだろうか、とふと思う。


足りなかったのは、才能か、決意だったのかー
自分の持っていたであろう情熱の熱さを思い起こしながら
独りごちる。


歌詞、対訳下記より転載
http://pingpongkingkong.blog108.fc2.com/blog-entry-296.html