浅田次郎氏が週刊現代に連載していた「勇気凛々ルリの色」は
その終了する時、エッセーは自他ともに小説家として
認められるまでの自己研鑽の場で
直木賞を受賞するに至り、曲がりなりにも
その目的を果たしたため卒業するようなことを記してあった。
そのため、その続編である本書を本屋で文庫本を見かけたとき、
ちょっと不可解な感じがした。
まあなんだかんだいっても、
浅田次郎氏のにこやかな中年紳士の顔の下に隠れている毒舌ぶりを
堪能できることは昔からのファンにとって喜ばしい限りである。
内容は、講演録を活字化したものが大半であり
なるほどな、と氏の小説に対する位置づけを理解することができた。
芸術家ないしはクリエーターというのは、
ナルシズムの亜種として、自分の作品に愛着を注ぐことが多いが
それにしても今まで"泣かせで唸らせ"てきた作品に対する
氏の思い入れの深さは並大抵のものではない。
映画化された代表作「鉄道員」をみつけた時、
自分の娘に久しぶりに邂逅したような感慨にとらわれたと述べているが
彼は自分の作品に対して等しく愛情を注いでいるこをを
行間から容易に読み取ることができる。
それは、おそらく情熱という言葉を足がかりに
文壇に挑戦した氏の自負であり誇りと同義だろうと思う。
人の情熱に限界はない。
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