映画「世界最速のインディアン」のバート・マンローの伝記。
映画には描かれなかったマンローのイカレ具合がとても面白かった。
金もないし、道具もないが彼は不思議だが
バイクを改造するにあたり難儀したとがなかった。
難儀しなかったというより、
壁にぶつかったらその壁をぶち破れとばかりに
なんでもかんでも突撃したという方が正確かも知れない。
バイクの部品を製造や加工するにあたり
金属や空力特性の技術や知識もないのに
見よう見まねで作り、何度も失敗してはそれをモノしたりと
はたからみていて、そんなの有り得ねぇだろうということを
当たり前のようにやってしまう。
勿論、失敗は数しれず知人の工場で小火を出して火傷したり
レースで大ケガしたりと命からがらの目に何度か遭っている。
しかし、その度ごとに「マシンは?」と聞く
タフネスさというか、マイペースさには
半ば呆れながらも、笑いが止まらない。
本当にイカレたオヤジだ。
60過ぎで骨折し、母親に説教されても
"今の話は聞かなかったことにする"などと嘯く彼は
良識ある大人ではないが、魅力溢れる人物である。
半世紀以上にわたりにバイクをいじり続け、スピードを追求し続けた彼は
貧しくて窮屈な生活を送り続けてきたが、幸せだったのではないだろうか。
スピードの神に捧ぐと彼の住居兼小屋の納屋に書いてあったが
正しくスピードの神に捧げた人生だったといえるだろう。
そして彼は子供たちにとても好かれていた。
本の最後に載せられていたバートへ捧げられた文章を読めば
彼が町の人からどれほど愛され、大事にされていたかが分かるだろう。
誰に何と言われようと俺は俺の道を行くー。
そんなささやかな男のわがままを貫き通せる人生もまた良しである。