米内光政


米内光政―海軍魂を貫いた無私・廉潔の提督 (PHP文庫)



色々な本やドラマで人となりは知っていたが
氏の伝記を読むのは初めてである。
一言で言えば、寡黙でねばり強く高潔な人物
部下がこの人のためにならと思いたくなることが
しばしばあったことが書かれているが
それは、おそらく彼の育った南部という土地柄から
もたらされた部分が少なくないような気がする。


昭和初期、世論が日独伊の三国同盟に急速に傾く中
海軍三羽ガラスと呼ばれた山本五十六、井上成美ともに反対し
昭和天皇の信頼も厚く、彼に組閣の大命が下ることもあった。
実直で、是々非々をはっきりした言動が愛された故だろう。
この本では、そうした当時の政治的背景を踏まえて
米内光政が昭和初期の政界において果たした役割を中心に綴っている。


作者は単純な海軍善玉論、軍人暴走論に偏っているわけでないが
陸軍の無統制ぶりがやや際だって書かれていたのが特徴で
平均的な記述が多かった。
米内光政にカタルシスを感じる部分が少なく
個人的にはイマイチ食いつきが悪かったが
巷で言われている氏の行動と評価をするには適していると思う。