若井と走るファィナルラップ

右の画像は一色登希彦氏の漫画から


93年原田哲也WGP終戦のスペインGPで優勝し、
カピロッシを逆転してチャンピオンを手に入れる。
そのレースを中継していたテレビ大阪の千年屋アナウサーは、
原田が首位に躍り出て単独で最終ラップに突入する場面で
「若井と走るファイナルラップ」と叫んだ。
若井とは、その年に亡くなった原田の先輩にあたるライダーである。
千年屋の台詞は、以後WGPファンの間で永らく語り継がれ今日に至っている。
叫んだというよりは、早口でまくし立てるような言い方だったが、
何か悲壮な祈りを含んだような声は、やはり心からの絶叫と形容するに相応しく、
だからこそ心ある人々の記憶から消えないのだろうと個人的に思う。



本年1/14の拙ブログでフラミンゴと呼ばれた若井伸之のイラストをアップした。
93年のスペイン・へレスサーキットで亡くなった彼のことを
知っている人間は日本には殆どいない。
かくいう自分も彼の走りは雑誌の中でしか知らなかったし、
少なくない時間、彼の名前を記憶の底に埋めていた。
そんな自分だが、それでも彼の功績の大きさに比例しない認知度に歯痒く、
その悔しさをぶつけイラストを書き上げた。
ただ一日300ヒットがせいぜいの弱小ブログで紹介したところで、
社会に与える影響などゼロに等しく自己満足の範疇を越えるものではなく
己の無力さを感じていた。



最近、購入した一色登希彦の漫画「Motive」の0巻に、
若井のことに触れる場面があった。
ほんの2、3ページのことであるが、
不意に涙腺がゆるんだ。
彼を覚えている人間が、語る人間がいたことがただただ嬉しかった。
孤独に怯えていた人間が、世界との絆を見つけた喜びというのは
きっとこんな感覚なのだろう。



参考URL
http://www.geocities.co.jp/MotorCity/3199/haradanew.html#1993
http://www.geocities.co.jp/MotorCity/1347/flamingo.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/若井伸之