眼上の敵

 自衛隊の最大の敵は大蔵省さ。


 「ギャンブラー」矢作俊彦


映画「13days」では、マクナマラ国防長官は
世界の危機を回避したケネディの頭の切れる善玉的な人物スタッフとして描かれているが、
映画の公開当時、私は激しい違和感を覚えた。
何故なら、この人物、現場に口を出しすぎて
ベトナム戦争におけるアメリカ軍苦戦の原因を作った張本人であるからだ。


空対空ミサイル重視による戦闘機の機関砲不要論が軍の主流を占めたために
空中戦の主戦力として投入されたマクドネルダグラスF4ファントム2に、
機関砲が装備されることがなかった。
ところが実際には、期待された空対空ミサイルはそれほど命中率が高くなく
ミサイルを撃ち尽くしたファントムが接近戦に持ち込まれて撃墜される例が多かった。
戦争における技術というのは絶えず進歩するものであるから
現場における経験主義だけでは行き立たなくなるのことは自明の理だが
現場を全く理解していない技術は、役に立たないどころが味方にとって危険極まりない。
そうした机上の論理で米軍を振り回し窮地に立たしめた人物こそ
マクナマラであると私は理解している。


戦争そのものに対する意見やマクナマラ個人に対する評価は人それぞれあるだろうが
彼の実験的論理のために多くのアメリカ国民が死んだことは
紛れもない事実である。


先日、巡回先のサイトを見ているとそのマクナマラでも仰天するような記事を見つけた。
災害派遣自衛隊不要」と言い切るこの女は、
今年の出来事を知らないくらいに、予算の計算に忙しいのだろうか。
航空自衛隊OBの佐藤氏は

 自衛隊は女性に弱いですから、彼女を救いたいという気持ちになります。
 このままだと将来、日本を害を及ぼした人間として教科書に載ってしまうかも知れません」


 参照:酔夢ing Voice」西村幸佑

とユーモアを交えて応えていたらしいが、
もしこのオバサンの云うがまま自衛隊の予算が削減されれば、恐ろしいことである。
地震や災害が発生した場合、これまで以上に多くの人間を救出できなくなり、
半島有事の際は、内外の同胞を見殺す事態もあり得るだろう。
そうした危機管理は、財務省エリートの想像の範疇を越えた出来事なのか
それとも日本国民の生死について、財務省の関知するところでないという意志の現れなのか
それは分からないが、「もしも」の場合を想像すれば空恐ろしい思いである。


国の防衛というものは、
赤字国債を何年も発行し続けた挙げ句そのツケを国民に回して
解決しようとする旧大蔵省エリート達の生ぬるい世界とは違うのである。
日本の至近距離で、"時代遅れ"の装備を大量に保有した国の国民が
日本を蔑視ないしは敵視し、
その国の調査船や潜水艦に日本の領海航行を許している今の現状は
国家主権を有する独立国として極めて異常なことであり、
それらは早急に是正されなければならない。
また、今なお3桁に及ぶ国民が北朝鮮に拉致されたままで、
さらにはその手助けをした人間が平然と街を闊歩している現状を考えれば
装備の削減どころか、自衛隊を含めた日本の国家戦略を
抜本的に見直さなければならないのは明らかだ。
何故、日本の軍備を自ら弱体化し、国を自ら危機に陥れる愚を犯すのか、理解に苦しむ。




前述したマクナマラ氏は、机上の論理を振りかざしたかもしれないが
その論旨は理解できる部分も少なからずあった。
だが、このオバサンは祖父が軍縮したからという血筋と
小学生すら納得できないような論理で物事を進めようとしている。
これほど、背筋の寒くなる話は、ついぞ聞いたことがない。