誇り高き日本人でいたい


誇り高き日本人でいたい

日本国籍を取得したウェールズ出身の
赤鬼C.W.ニコルのエッセイ集。
ウェールズや北極、エチオピアでの出来事、
日本に来て彼と交流をもった人物などが
ユーモアに、そして真摯につづられていた。


本書は、今までに語られたことや出版された文章と
重複してる内容が多く目新しいものは殆どない。
しかし、それは来日して30年が経過しても、
賛辞を繰り返すほど彼が日本を愛している事実の現われとして
受け止めるべきだろう。
彼の文章に触れれば
日本には日本人が気づいていない美しさに溢れていることに気づく筈だ。



彼は多くの尊敬すべき日本人に出会ったことに
感謝と尊敬の念をこめて語っており
彼の眼鏡にかなう人物がこの国に少なからずいたことが
少しばかり誇らしく、そして嬉しいが
その一方でおかしくなりつつある日本人と日本政府に対する警句には
恥ずかしい思いがする。
以前、ラジオの番組で「サムライの精神がなくなった」と嘆いていたが
日本人となった彼の悩みは
「サムライ」に代表される日本の精神を次世代にどうやって
伝えるかにあるのかも知れない。


事実、彼は後世の日本人に日本の森を残すために
黒姫の山を買い取り、私財をなげうって
それらを豊穣な森に作り変える運動を行っているというから
彼の崇高な理念と行動力には
ただ頭を下げて敬服するのみである。



和歌山太地の鯨取りの物語「勇魚」を読み
彼の日本に対する深い知識と造詣に深い感動を覚えて以来
常に日本人とは何か、を考えるようになった。
この二十年で彼が云う日本人に自分が近づけたか否かは知らないが
美しい日本を伝えていきたいと願う。
蝉の鳴き声で一日が始まるーそんな素晴らしい日本を、である。