デジャヴー


パラグアイスウェーデンと熱闘を演じ、引き分けを目前にして
ゴールを割られ一次リーグでの敗戦が確定した。
パラグアイの選手たちの落胆ぶりを見てると8年前の彼らと重なるものがある。


8年前のフランスW杯、決勝トーナメント1回戦で
パラグアイはフランスと対戦した。
当時のフランスは全盛期のジダンが率いる最強チームであり
その試合においても圧倒的にフランスが試合を支配していた。
だが、パラグアイには熱血のGKチラベルトがおり、
フランスの攻撃を鉄壁の守備で悉く跳ね返し、ゴールを許さなかった。
互いに無得点のまま決着は延長戦へともつれこみ
パラグアイが有利と思われたPK戦突入の予感をスタジアムの誰もが感じたとき
完璧を誇っていたチラベルトの守備が割られ
フランスがゴールデンゴールを決まり、フランスが勝利した。


ボールがゴールネットを揺さぶったとき、チラベルトは仰向けに倒れ天を仰いだ。
彼のチームメートも同様にグランドに倒れこみ泣き伏した。
しばらくすると、うずくまるパラグアイの選手を
励まし立ち上がらせようとする者がいた。
それは、なんと天を仰いでいたはずのチラベルトだった。
主将としてGKとして本当は彼が一番悲しかった筈であり、泣きたかった筈だ。
しかし、彼は敗北を嘆くことを潔しとせず
ともに戦ったチームメートを労わり称えることを選択した。
美しい敗者グッド・ルーザーという言葉はあまり好きではないが
このときの彼らをそれ以外の言葉で称えることはできなかった。



スポーツの世界において勝つことが全てであるが、
美しい敗北は、卑しい勝利に勝る、ということもあるような気がする。



以上、敗北し続けた中年の独り言である。