百万遍


深谷の図書館で二度の居眠り中断を挟み、半日で上下巻読了。


副題として、つけられた"青の時代"の青とは、
若さ故の未熟な色を意味するのであろうが
肌に刺す時は黒でも、青く見えてしまう刺青を暗喩しているように思える。


作者花村の自伝的小説ということだが、小説の構成要素は今までの作品同様
アンチキリスト、ヤクザ、暴力、ドラッグ、音楽、セックスであった。
問題児のためキリスト教系の全寮制で中学時代を過ごし
進学した都立高校では同級生の顎を割り、放校。
バーテンダー、牛乳配達、喫茶店のウェイターなどの職を転々としながら
ふとしたことで刺青師と出会い、それに憧れる。
しかし、未成年であることを理由に弟子入りを断れてしまい
他に夢中になれるものを見つれられないまま
行き場のない若さというエネルギーを抱えながら悶々とし、
日本社会の底辺を蠢く。
そうした昏さを持ちながらも、この小説は出生や生い立ちについての恨みではなく
怒りー花村作品全般に共通にする衝動的な匂いに満ちていた。
キリストによる神の愛を否定しながらも、
罰を与えてくれる神が欲しくて泣いている迷い子のような
いつもながらの彼の作品だったと思う。






百万遍 上