SMの大家と理想の教師像

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産経新聞のコラムに教師像の一つのモデルとして
SM小説の大家、団鬼六氏のエピソードが
自伝エッセーから引用される形で紹介されていた。
今住んでいる場所からさほど遠くないところで
中学教師していたという団鬼六氏のと人となりに
興味を覚えて手に本をとってみた。


戦争中の十代に捕虜になった米軍兵士との交流、
関西学院大学て落としかけた英語の単位を
正攻法でない手段で取得して卒業、
上京後、二十代で文学賞の獲得と
その賞金を元手に水商売に手を出して失敗、
都落同然で、港町の中学校教師としていた頃の
ちょっと笑える艶やかな話とその後日談、
相撲取りの後援やタコ八郎を住み込みで雇った経緯、
将棋誌の責任者を引き受け、
腎臓を病んでから透析拒否と医師の説得、
鬼六氏の"強"ではない"靭"である生き方と
軽妙であるはが洒脱ではない文章は
人間とは、愚かな生き物であるが
愛せずにはいられない存在であることを
語っている。


新聞にも紹介されたように
中学校の教え子であるヤクザと警察が
鬼六氏を媒介として設けた酒席のやりとりは
言葉として口に出すことが憚られる
男の矜持や同級生としての友情が
伝わってくるような饒舌な筆致で描かれている。


鬼六先生はきっと理想的な教師とはいえないものの
とてつもない魅力を発していたことたろう。
失敗しても人生はやり直せる
ーそんな生き方を体現し、多くの人に愛され、愛した人間が
つまらないはずはない。