戦う男でありたい

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12月15日(水)『ファイト』

個人的に日本の詩人の中で最も尊敬してるのは中島みゆきさんですが、彼女の歌に

「戦う君の歌を戦わない奴らが笑うだろう、ファイトッ」

という一節があり、これほどの美しく残酷に人間の本質を突いた日本語は他に無いだろうと常に思ってます。
人は安全で安定した場所から出て行く人間を、現在を変えて新しい世界を目指す人間を、自らの平安を破るものとして嘲笑し侮蔑します。怖いからです。羨ましいからです。
そして挑戦者の成功に対し、称賛よりも嫉妬、さらに中傷が続き、結局、苦労して得るものは自己満足と言うのが人間社会の特徴の一つです。
例外的にアメリカはこの傾向が僅かに、ほんの僅かに、他の文化圏より薄く、このほんの僅かな差があの国を世界最強の座に付けていると私は思ってます。

そして、どんなに苦労しても得られるのは自己満足だけなのに、全てを敵に回してまで一人で戦い続けたのが本田宗一郎総司令官だったと私は思っています。
人のマネを嫌い、楽な道でも嫌い、あくまで己の道を突き進んだ人でした。当然、その歩んだ道は間違いと失敗だらけなのですが、僅かないくつかの成功が桁違いに眩しいものでした。
その本田宗一郎率いるホンダが、誰に頼まれたわけでも無く何の必要も無かったのに、俺たちが世界一のクルマ屋なのだ、と証明するためだけに1964年からF-1に参戦します。
当然、死闘と言っていい戦いになりました。

(中略)

2020年はコロナ騒動もあって予想外の苦戦となりましたが、それでも確実に結果を出しつつありました。
その中で、突然、ホンダの社長がF-1からの撤退を宣言します。会社は利益を出すための集団であり、その決断は致し方ないところですが、その宣言文の内容が完膚なきまでに負け犬の泣き言で、こっちが泣きたくなりました。
ホンダはやはり死んでいました。もうダメでしょう。上が最悪の負け犬根性で現場は戦えるのかと悲しくなりました。

だが戦ったのです。そして勝ったのです。
コンストラクターチャンピオンは逃しましたが、本田宗一郎総司令官が地球上から消えてから初めて、ホンダはドライバーズチャンピオンを獲りました。
組織のトップが戦う誰かを笑う人間なのに、それでも戦い、勝ちました。ファイト。
個人的に調べた範囲内に置いてですが、人類がオギャーと生まれてから、トップが腐った組織が勝った例を一つも知りませぬ。そんなものは無いと思っていました。
間違っていました。戦うあなた達は勝ったのです。ファイト。本当に素晴らしいものを見せていただきました。心よりお礼を申し上げます。

そしてその美しい戦いは、モータースポーツ史上まれに見る激戦として記録される事になりました。メルセデスのハミルトンとレッドブルホンダのフェルスタッペンの死闘は十年を超えて百年残る戦いでした。
それに相応しいホンダの現場の皆さんの戦いだったと思います。ファイト。私は死ぬまで戦う人を笑わない奴でいたいと思います。ありがとうございました。


直木賞ウィナーにして下妻南星高校の大先輩・海老沢泰久氏の
ホンダFI挑戦の第一期と第二期の奮闘を描いた「FI 地上の夢」の帯には
"ホンダには夢に取りつかれた男たちが集まっていた"と書かれていたと記憶している。

昨年F1王者に返り咲いたことに最大限の賛辞を惜しまない夕撃旅団氏は
ホンダの社員ではないがだれよりもホンダの夢に
取りつかれた人物ではないかと思う。

彼の文章に触発れされて何年かぶりにファイトを聴いた。
ただ一つ思うことは
戦う人間でありたい、ということである。