編集というお仕事


「重版出来」、「ルーザーズ
漫画雑誌の編集部を舞台にした漫画を
二つ読んだ。


「重版出来」は、テレビドラマ化された作品で
元柔道選手にして新米の女性編集者を主人公として
業界の細々としたしきたりや職人技等を
わかりやすく描いている。
昨今の漫画のウェブ展開についてもふれられており
急激に変化する出版業界の実情が
垣間見れるなど、興味深い内容が盛り込まれている。


ルーザーズ」は
日本初の青年漫画として時代を画した
「週刊漫画アクション」の創刊期を描いた実話である。
4コマではない、ストーリー漫画が
子供が読むモノとされていた時代に
売れるかどうかわからない大人向けの漫画雑誌を
立ち上げるための苦労譚が描かれている。
当時は斬新過ぎる絵柄であった
モンキーパンチやバロン吉元
発掘して連載の軸に据えるなど
大胆かつ精緻な一人の編集者の手によって
産み出されていたことに驚かされる。


藤子不二雄の「まんが道」など
従来から、漫画業界を舞台にした作品は
多くあったが、
そのほとんどは、漫画家が主人公であり、
編集者はサブキャラ的な存在に過ぎなかった。
だが「重版出来」と「ルーザーズ」は
雑誌の制作という視点で業界を捉えることで
漫画の制作という馴染のある話に、新鮮な印象を
与えていることに成功している。
この二つの作品に対する評価が高いのも
当然の帰結である。
企画勝ちの作品と言って差し支えないだろう。



こうした漫画業界の裏側が
描かれる背景としては、
急激に変化する出版業界の今昔の話が
それだけで面白いこともあるが
漫画家や編集者に対する一般の理解が進み
実話に基いた物語を受け入れるだけの素地が
出来上がっていたことが大きいと思う。


漫画が、紙媒体の拘束から解放されつつある今
漫画を世に送り出す人間の
悲喜交々がつまったこの二つの作品の持つ意味は
大きいといえる。