俺はエースのジョー、生まれながらの殺し屋さ
そのセリフと出あったのは
大学1、2年のころだったと思う。
当時、よく読んでいた矢作俊彦の
映画にまつわるエッセイで
触れられていた。
無国籍映画とも呼ばれていた日活アクション映画が
にっかつロマンポルノに変わり
邦画全体が斜陽産業となっていた時代に
映画が唯一無二の庶民の娯楽であった頃を回想し、
ときにはコミカルな作品でも
スクリーンで演じ続ける宍戸を
否定するわけでもなく
肯定するわけでもなく
独特の乾いた文体で綴っていた。
その後、映画というよりは、
レンタル向けのビデオ作品で
矢作が監督となり、
ロマンスグレーのジョーが復活し、
初めて「実物」を観た自分は
ブラウン管の前で拍手喝采を送った記憶がある。
好き嫌いと損得を一緒にしちゃ、長生きしている意味がないぜ
矢作作品に出演した宍戸のセリフだが
これほど痺れる言葉に出会ったことがない。
彼の悲報に接し、
笑いながら「アバよ」というのが
最もふさわしい送り方ではないかと独りごちる。
- 作者:矢作 俊彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1990/12
- メディア: 文庫