ピート・キャロルへの手紙7

ジェイク・オルソンは、
同じ学年のホルダー、
シュミットの肩に触れながら走り、
喜びをかみしめていた。
入部が許された2年前、彼はクレイにこう言われた。
「入部は許可する。ただし、
 このチームは実力のある者しか出場させない」
ジェイクは、コーチの言葉を胸に刻み、
2年間努力を続けた。
バーベルを持ち上げ、毎日10kmを走った。
体重を増やし、他の選手と同じような体格を少しずつ作っていた。
そして、彼が試合で行う唯一のプレー、
ロング・スナップを毎日練習した。


四つんばいになり、ボールを股間を通して
約7ヤード後方へ投げるロング・スナップは
フィールド・ゴールで3点を狙う場合か
タッチダウンの後のコンバージョンで
キックをチョイスした時に行われる。


アメフトで一試合で行われるプレーは
オフェンスとディフェンス、その他を合わせて
百プレーを超えるが
キックは十回にも満たないことが多い。
しかし、どのチームもキックのために
専門のスペシャリストの選手を用意している。
ジェイクは、キックプレーのロング・スナップ専門の選手として
試合の出場を目指した。


ジェイクは、毎日練習したが
彼のポジションには、優れたプレーヤーが何人もいた。
入学した年と翌年はユニフォームすら、もらえなかった。
それでも、彼はあきらめなかった。
ジェイクは自分のロング・スナップが、
他のプレーヤーに劣っている理由が分からなかった。
なぜなら、自分の目で確かめる術がないからである。
普通の選手ならば、ビデオにとって確認し
簡単に修正できることが、彼にはできなかった。
しかし、チームメートが彼を助けた。


球の高低、左右について、
シュミットは都度、修正を要求した。
回転の加減一つボールの軌道は大きく変わる。
やがて彼の放つボールは、全くぶれなくなった。
三年目のシーズンを迎える夏、
彼は監督からダークレッドに
黄色で61を染め抜いたユニフォームを渡された。


それまでスタンドからチームを応援していたジェイクは
やっとサイドラインに立つことが許された。
チーム・メートは彼を祝福した。
誰も彼が61番をつけているのを贔屓だとは思わなかった。
全米のどんなロング・ナスッパーと比べても
遜色ない域まで達しているのを彼らは知っていた。