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地方に限らず医療現場というのは、
今のくくりでいえばブラックにあてはまるのかもしれない。
延々と続く治療行為の果てにあるのは
つまるところ患者との永遠の別離であり
どれほどの力をこめ、最善を尽くしたとしても
自然の摂理を変えることはできない。
理想の医療というよりは、
己の心情に忠実であろうとする一風変わった青年医師を
主人公に据えたこの物語は、
医療現場の現実に立ち向かって治療に携わる者達の
喜怒哀楽と矜持、苦悩を巧みに織り交ぜ
心地良い読後感を与えてくれる。
それは厳しい現実にと戦おうとする強い意志を
物語から感じ取ることができるからではないだろうか。
作中に引用されたジャン・クリストフの言葉
「芸術家というものは、嵐(あらし)の間にも常に北を指してる羅針盤(らしんばん)だ……。」に
この作品に込められた思いの深さを
伺うことができるのではないだろうか。