楊家将

楊家将〈上〉 (PHP文庫)楊家将〈下〉 (PHP文庫)


北方謙三歴史小説
ハードボイルド作家として名を馳せた氏の作品ではあるが
いい意味で期待が裏切られた。
非常に面白いー。


北漢の武将として国家を支えた楊家
家長楊業率いる楊家は、
宋との戦いで比類なき強さを発揮するものの
暗君と佞臣の小心と無能により
国家の凋落は誰の眼にも明らかであり
滅亡は遠くない状況にあった。


政に関わらず武人としての生き方を貫き
変節を嫌い国家に忠誠を誓っていた楊業だが
佞臣の奸計に陥り、遂には漢を見限り
宋に与することを決意する。


漢消滅後、宋の皇帝趙光義に仕え
遼のと燕雲十六州を巡る戦いでは
七人の息子らとともに好敵手との激闘を繰り返し
度重なる危機にも動じることなく
純粋なまでに武人としての潔い生き方を貫く。


武人としてほぼ完全無欠の楊業に対して
長短を有するものの戦いに対して
独自の考え方を持つ七人の息子。
宋の皇帝、文官たち、敵方となる遼の蕭太后
好敵手として耶律休哥らを巧みな人物造形で登場させ
それらの人物の信念や情熱を糧に物語が進行させていく。


武人として有能でありながらも
不遇であり続けた二人の対決


窮地に陥った皇帝趙光義を脱出させるため
圧倒的な不利な状況の中でも
武人として能う限りの力を十全に発揮し
戦況を動かし、支配していく様は圧巻であり
慟哭と銘と打たれた巻末は
筆舌に尽くしがたい感動に襲われた。