中原の虹

中原の虹 (4) (講談社文庫)中原の虹 (3) (講談社文庫)中原の虹 (2) (講談社文庫)中原の虹 (1) (講談社文庫)

1900年代、清朝が倒れ、新時代の幕開けと期待された
辛亥革命も暗礁にのりあげ無政府状態となった中国を舞台とした
蒼穹の昴」「珍妃の井戸」に続く浅田次郎の大河小説。


清朝末期、東北部の満州に忽然と現れ
瞬く間に満州の主となった張作霖
彼はいったい何を考え、何を目指したか。
数多くの数奇な物語に彼生き様を彩られながら
「没法子(しょうがない)」と
満州の那辺で生きる多くの民衆の嘆きの悲しみを
怒りとかえ力となして、突き進む。
歴代王朝の皇帝がもつ伝説の龍玉に力に導かれるかのように。


登場人物の言葉遣いにやや違和感を感じながらも
張作霖満州に力を伸ばし
民衆から慕われる様は小気味よい。

清朝を築いた愛新覚羅の物語を重ねあわせ
全く二つの別の物語を進行させてかつ
長城を超えて進撃するラストシーンで一致させる
巧みな構築は鮮やかの一言に尽きる。


神でも鬼でもねえ、俺は張作霖だ。
と何度となくつぶやく主人公のセリフに
作者が描きたかった英雄の姿が凝縮されていると思う。