蒼穹の昴


浅田次郎原作の名作を
NHKが中国と共同で制作したドラマが
二日の夜からハイビジョンで始まった。


衣装や舞台などの美術はかなり凝ったつくりで
金をかけているような印象を受け
それなりに楽しめるのだが、いくつか残念なことがある。


ドラマの軸を西太后に据えた脚本は、視聴率を稼ぐなどの
営業効果を考えれば、仕方のない面もあるだろうが
問題はそのキャスティングである。
何故、西太后が田中裕子なのだろうか。
ドラマの会話は全て中国語で字幕付きでありながら
西太后の台詞は、全て吹き替えになっていた。
声は、演技を彩る重要な要素であり
彼女の声の艶やかさを活かさないのであれば
メインな役所をあてがう理由がわからない。


中共同制作というふれこみで、
重要な役所を日本人にやらせたいという意図はわかるにしても
それであれば、中国語のできる俳優なり、女優を用意すべきだったと思う。


また、主題歌を浜崎あゆみが歌う主題歌も疑問である。
浜崎の上手、下手、曲の出来、不出来ではなく
歴史物のそれなりに重みのあるドラマに
何故若手(といってもデビューから10年以上経過しているが)のポップ歌手に
主題歌を歌わせるのか。
高い彼女の声域は、どうも聞いても重厚なドラマの雰囲気にはそぐわない。


若い世代をドラマに引きつけたいというのであれ
この起用にも納得しよう。
だが、若い世代を相手にするのに、字幕スーパーはないだろう。
特に若い世代が字幕を敬遠する傾向が著しいのに
敢えてハードルを高くする意味は何か。
若い世代に媚びを売るようなドラマにしたいのであれば
字幕などやめて、全部日本語吹き替えで放送すれば事足りるだろうに。


こうしたことはドラマの枝葉末節な事項かも知れないが
どうも作り手に明確な戦略を欠いているような印象がぬぐえない。