死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人

死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人

この世に無知と貧困がある限り、この種の物語は必要であろう」
レミゼラブル」ヴィクトル・ユゴー 


無教養で貧困に苦しむ一人の男が
人間愛に目覚め、
やがて魂が救済されるにいたる物語を
ユゴーが記したのは19世紀のことである。
それから1世紀以上がたち
日本は世界でもっとも豊かな国の一つに
数えられるようになったというのに
無知と貧困から生まれる悲劇は後を絶たない。




2005年11月、大阪で発生した姉妹殺害事件。
約1ヶ月後、事件の容疑者として逮捕された山岸は、
2000年に山口で実母を殺害していた。


本書は、加害者となった山岸の「反省しない」の特異性に着目し
AD/HD(Attention Deficit / Hyperactivity Disorder:注意欠陥/多動性障害)が
社会に認知されていない現状を、
関係者のインタビューを交えて浮き彫りにし、
日常に潜む危険について警告を発している。


一読して思うことは
障害に対する無知や偏見が、
人間をスポイルして犯罪者へと向かわしめている事実を
もっと知らしめるべきではないだろうか。
障害について提供する情報を増やすことは
一概に良いことばかりでないく、
偏見や差別など多くの弊害を招くであろうし
多くの課題が存在することは容易に推測がつく。


だが、難しいからといって
正面から問題を取り組むことを回避し続ける限り
この種の悲劇は絶えることなく繰り返され
さらに不要な誤解や偏見を育てる温床となるだろう。