スカイクロラ

スカイ・クロラ [DVD]



押井守監督で昨年夏に公開された作品
「ポニョ」のヒットで、すっかり影が薄くなり
埋もれた感が否めない。



ポニョに比べるとやや難解な印象があるが
戦争、再生される生、戦士としての宿命
命の価値、管理された社会に対しての押井の解釈に
皮相めいた風刺がやや効いていると感じる程度であり
押井独特の間が受け手にそういう印象を与えているものの
さほど難解な内容となっていない、



管理された生であっても、選択の自由があり
不幸は、生を管理されていることでなく
選択する勇気を持たないことにあるという主張が
この映画には込められている気がする。



アニメに限定した話だが押井作品は能に近い印象を受ける。
日本人に擬しているのかキャラクターの表情が乏しいなか
ライティングや"見せる顔の角度"で
人物の感情を表現する。
空間を表現することで、登場人物と物語に深みを与え
その意味を見る側に"考えさせる"。
こうした手法こそが押井作品の最大の特徴にして
醍醐味なのだろうが、この作品もその指向が満ち
"世界全体がどことなく異邦と感じる”押井ワールドを堪能できた。



どこかの新聞の映画評に日本だったらいざしらず
イスラエルなどの年がら年中トンパチしているところで
この作品の世界観が理解できるかというコメントがあったが
立身出世の手柄話の英雄譚や感情まるだしの反戦映画より
むしろこういう物語をクールに受け入れるのではなかろうか。
物語を鑑賞できる余裕があればの話だが。