明治天皇

明治天皇〈4〉 (新潮文庫)明治天皇〈3〉 (新潮文庫)明治天皇〈2〉 (新潮文庫)明治天皇〈1〉 (新潮文庫)











日本文化を研究し続けたドナルド・キーン氏が
明治天皇のご生誕から崩御されるまでを、
折々の出来事を交えて、時系列に綴ったものである。


明治天皇ご自身の考え方については、それを表した文献が少なく
詠まれた歌などから推測するしかなく
客観的な記述で、乾燥した印象が残るが
むしろ、感情の起伏が殆どなく
あたかも一個の無機質のように好悪を表すことなく公務に励まれた姿にこそ
明治という国家を一身に背負った明治天皇の偉大さを感じる。
この統治者なくして明治維新から後の発展をなしえることはできなかっただろう。


海軍の軍艦を購入するために、自ら倹約に励まれ
日清戦争の時は、広島の大本営に移動されて
寒冷の地で戦う兵士を思い、公務する部屋に暖房を入れることを許さず
また日露戦争の際、奉天会戦日本海海戦などの
戦捷や勝利に喜ぶことなく、ひたすら早期終戦を願う姿は
兵士や国民の命を顧みない
ドイツのヴィルヘルム2世やロシアのニコライ2世と対極にあり
このような国主を持ち得た幸運を喜ばずにはいられない。



それにしても、4巻は長かった。