1975年大手・日野楽器のPRを務める漆田亮のところに
日野楽器が製造したエレキギターのクレームが
全消費者同盟の槇村真紀子の手によって持ち込まれる。
彼女との対峙、それが全ての始まりだった。
その頃、スペインから伝説のギター工匠、ホセ・ラモスが
孫娘フローラを連れて来日し
彼を使ったパブリシティを企画している日野楽器は
老工匠から奇妙な依頼を受ける。
サントスという名の日本人ギタリストを探して欲しいー。と
日野のライバル会社太陽楽器の取締役大野と
太陽のPRを務める萬広の那智理代子
サントスの息子と見られるパコ津川
全消費者同盟の槇村真紀子
ラモスの孫娘フローラ等を巻き込みながら
漆田亮を軸に物語は複雑な展開をみせる。
様々な思惑入り乱れ
内戦の影響未だ濃くテロリストが渦巻くスペインへを主舞台として
ギターとフラメンコに彩られた謎と因縁が
漆田を苛酷な状況へと追いたてる。
本作品は、逢阪剛のデビュー後に出版された作品であるものの
同氏がデビュー前に執筆した処女小説ということである。
それゆえ小説としては、かなり雑なつくりで粗が目立つが
ミステリーとしてはかなり良質な部類に入るのではないかと思う。
約二十年前の作品でありながら、物語に違和感を感じさせないのは
物語を彩り盛り上げる普遍かつ重要な要素であるスピードとスリルが
ふんだんに溢れ、それがレベル以上のもので構成されているからだろう。
であるから直木賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会賞の名誉に
輝いたというのも納得である。