腐食生保

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生命保険業界のガリバーと呼ばれ
メガバンクを凌ぐ資産を有する実在の生命保険会社を
モデルにした高杉良経済小説



大日生命の勤める吉原周平は
英語の堪能なビジネスマンであり将来有望な若手幹部である。
彼がNYから日本に戻ってきた時
大日生命は、人事マフィアと呼ばれる鈴木が社長に就任し暗雲が立ちこめる。
吉原はトップの人事に異を唱え、
退職すら恐れず会社経営の健全化を同期や上司に訴えるものの無視され
吉原は現場の支部長として過酷極まりない業務に直面することになる。


人にやさしいが保険勧誘の謳い文句だが
ノルマ生保と自嘲するほど過酷な契約数が求められ
支部長や現場のセールスレディは、自爆と呼ばれる架空契約をしばしば作成する。
そうした多数の自爆によって多重債務に陥り自殺する者も出るが
会社は過酷なノルマ主義を一向に改めようとしない。


外資会社の商品がヒットする中で、
大日生命は魅力的な商品を生み出すことができず
他会社の財務状況を言い立て自社に切り替えさせる"風評勧誘"までして
契約数を維持する。
セールスレディの大量採用、大量退職のターンオーバーは凄まじく
ほぼ2年で全員が入れ替わる計算になるほどの離職率
そのことからしてみても現場の過酷さが見てとれるが
彼女達が文字通り、体を張った営業まで契約をとってきているにも関わらず
会社社長は、会社の金で国内外に夫人をともなった旅行など放蕩三昧。
自分の意見を異にするものを追放、左遷し側近をイエスマンで固め、
会社改革や気風刷新など全くする気がなく、たがために会社は
徐々に崩壊へと向かっていく。





この話がどこまで事実かどうか知らないが、
あまりの苛酷さに嘘だろ?と思わず呟いてしまった。
この小説も暗愚なトップと正義感と忠誠心溢れるミドルの奮起という
高杉良作品おきまりの設定を踏んでいるのが、
ハッピーエンドやそれを匂わすオチが全くないのがいつもの小説と違うところ。


いったい彼らは誰を幸せにするために働いているのだろうか。
小説に描かれていることが本当にならば、速攻で解約したくなるほど酷い話だ。