「南京事件」の探究?その実像をもとめて

「南京事件」の探究―その実像をもとめて (文春新書)




本書は、南京事件の有無を論じるのが目的ではなく
同事件が如何に報道され、
認識されるに至ったか、その過程を明かすのことを目的としている。


未だに、その有無を巡って大小の論争が
続けられている南京事件だが虐殺肯定派の主たる論拠となっているのが
英国マンチェスターガーディアン紙特派員ティンパーリーの
「WHAT WAR MEANS」と南京国際委員会が日本軍に提出した報告書
(「南京安全区?案」)である。
しかし、ティンパリー自身中国国民党国際宣伝処に所属し
蒋介石のために日本に不利な報道をしていたことが明らかにされており
また、WHAT・・・を出版したLEFT BOOK CLUBも
左翼系のいかがわしい出版社だったことが明かされている。


しかし、著者の北村氏は同書を歴史的資料として否定することなく
二冊ともも日本軍の行動を知る上で有効*1であると位置づけて、
書かれている内容から、日本軍による計画的な虐殺がなかったことを述べている。


それらの記述によれば、
日本軍兵士の犯罪行為がいくつか報告されているものの
日本軍の憲兵が積極的に不法行為を取り締まっていたことが記録されており
少なくても日本軍が組織的に、民間の中国人に対して
略奪、暴行、虐殺を行っていなかった事実が記されているという。


ただし、南京市内に軍服を脱いで潜伏した国民党兵士の摘発や処刑
南京市西北郊外幕府山で投降した約二万の捕虜の処刑については
国際法上、合法であった可能性であるが、その処刑方法や
その必然性に対して当時の日本軍は説明が不足し
日本軍の行動に政治性が欠けていた問題点を指摘している。


南京事件で30万人という虐殺者の根拠となったのは、
民間の団体である紅卍会と崇善堂の埋葬者数報告が元になっているのだが
紅卍会の報告については、一部水増しの可能性があるものの概ね実数に近く
4万数千の遺体ほとんどが城外で南京城内で埋めた数が千体余りに過ぎず
また崇善堂による報告は組織の人員や資材の規模からして、
その数に信のおけないものであり
結論として市内で虐殺が行われた可能性が薄いことを明らかにしている。


要約すれば南京事件とは、1937年当時としてさほど大きな問題でなかったものを
政治的な判断により被害者数を可能な限り大きく見積もって
東京裁判等で日本軍を糾弾する材料となったというのが著者の意見のようだ。


以上、ネットウヨの読書感想文である。

*1:その邦訳については、意図的な訳か誤訳かは判別不明だが、虐殺肯定派に有利な著述になっていることを指摘