チャーリー・ワイスへの手紙2


チャーリー・ワイス様


正直言って、なんとお礼の言葉を申していいのやら、皆目見当がつきません。ただ、こうしてペンを取っている間にも貴方が私たち親子に寄せてくれた特別のご厚情を思い、胸に熱いものがこみ上げてきます。モンタナはあなた方から頂いたボールを、あちらの世界でも抱いていることだと思います。息子はたった10年しか生きることができませんでしたが、決して不幸ではなかったと思います。


金曜日、大事なゲームの前にモンタナの死を知らせるかどうか、苦慮致しました。あなたが、10歳のファンの生死など気にとめない方ならば、問題ではないでしょうが、そうでないことを理解しているゆえに。もし、あなたの心を乱させてゲームを落とすようなことがあれば、と考えました。しかし、お忙しい中わざわざスケジュールを調整して、モンタナとお会いして頂いた貴方のやさしさと信義を裏切るわけにはいかないと思い、お知らせすることをいたしました。


申し訳ないことに、モンタナが死んでから初めての迎えた土曜日は、試合を応援するどころの話ではありませんでした。ですが、火曜日にあなたからのプレゼントを頂き、私達は初めてあなたがモンタナと交わした約束のことを思いだしました。あわてて知人から土曜日のビデオを借り、確認いたしました。アイリッシュ、最初の攻撃のプレーを。


自陣ゴール前1ヤードから攻撃となった時、息子との約束は無理だったかと思いました。テレビであなたの勇姿がアップなり、短い言葉でオフェンスコーチに指示したとき、あなたはモンタナに見せた優しい笑顔ではなく、勝負師の顔をされていました。その場面でモンタナと約束したプレーを選ばなかったからといって誰が責めることができるでしょうか。あなたは勝つために監督となられたのであって、決して10歳の子供との約束を守るためにアイリッシュの監督になられた訳ではないことを私は理解していました。


第1プレーが始まり、QBが右サイドに投げたプレーを見て、私は驚愕いたしまた。そして、モンタナが死の床からあなたと交わした会話がありありとよみがえりました。"ファーストプレーは、ライトサイドへのパスがいいな""よし男と男の約束だ。次のゲームも応援してくれよ"私はただむせび泣くことしかできず、それ以上試合を見ることができなくなりました。


ゲームの解説者は、ワイスが試合終盤でもないのにこなに危険なプレーをするなんて、信じられないとコメントしていました。そうでしょう。オーソドックスかつ堅実で鳴るあなたが、その堅実さを買われて名門大学の監督に就任したあなたがゴール前1ヤードで危険極まりないパスを選択するなんて誰も予想しなかった筈です。チームの勝利より名もない10歳の男の子との約束を優先する監督がいるなど神ならぬ身の誰が知っていたというのでしょうか。


私には、あなたが示してくれた温情に報いる術がありません。あなたの恩に対して私は何をすべきでしょうか。
ワイス様教えて下さい。


モンタナの父より