ピーター・ジェニングス


朝日が捏造を取材不足と言い換えて幕を引こうとした土曜日の夜
テレビをつけるとBSで先日他界したABCの看板ニュースキャスター・
ピーター・ジェニングス氏の特集をしていた。
幾度となく氏のリポートした番組を見ていた筈だが、
残念ながら生前の報道ぶりを覚えていない。
己の不明を恥じるのみである。


彼の功績について、キラークィーンの本音@キラークィーンさんの記事から引用

彼はカナダ人で、聞いたところでは、父親もテレビ界で活躍した有名なジャーナリストだったといいます。高校を中退してテレビ界に入り、ジャーナリストとして1964年からABC放送で活躍しはじめ、わかりやすい語り口と、その時代にはまだ新しかった「地球規模から見た」ニュースの伝え方が好評で、時代を変えてきた世界の有力者との数々の独占インタビューを始め、世界の各地で歴史が動くまでのレポートを多数手がけ、その業績から数々の賞も獲得しました。Emmys賞を16回、George Foster Peabody賞を2回、Alfred I. duPont-Columbia University賞を数回、Overseas Press Club賞を数回、特に最近では彼の番組”World News tonight”がEdward R. Murrow賞を2年連続で受賞しています。


特に最近ではPeabody賞を受賞した1999年の大晦日から翌日にかけて放送された”ABC 2000”という番組では、キャスターを25時間連続して務め、ワシントンポスト紙いわく「超人間的なキャスターの務めをはたした」といわれています。また、2001年9月11日の同時多発テロ時の放送では、ABC放送で最長時間を記録することになる60時間以上のキャスターとしての勤めを果たし、その落ち着いた語り口によって全米のみならず世界中の視聴者の心が鎮まったとも言われています。実は私もその一人で、アメリカの情勢を知るために衛星放送をつけるたびに彼の様子を目にして、その普段とあまり変わらない調子で淡々と伝える姿にしばし安堵した記憶があります。「ジェニングスは半袖でヘラクレスのような(超人的な)報道をやってのけた」(ワシントンポスト紙評)と言われています。この放送は後にPeabody賞とduPont賞を受賞しました。

同時テロ事件直後、ブッシュ現大統領と政府に対する批判ともとられかねない報道をしたり
広島の原爆投下の正当性に疑義をはさんだ特集を組んだ彼の仕事ぶりを番組では紹介していた。
ジェニング氏はアメリカの良心と言われていたそうだが、
真実を追究するためなら、視聴者や世論に阿ねないどころか敵に回すことを辞さない硬派な姿勢は
アメリカではなく、世界の良心と形容すべきでは、と個人的には思う。
キャスターを務める最後の日となった4月5日の放送で自身が癌に冒されたことを告白し
「髪の毛がいつ抜けるかを聞くべきか」と戯けながらもガンと戦うことを毅然と語るくだりは、
"全てのジャーナリストよ、こうあれかし"と思わずにはいられなかった。



英語に不案内であるため正確なところは分からないが
アメリカのマスコミも左傾化が著しいと聞く。
政府の監視が、ジャーナリストの使命の一つである以上
報道が反政府ないしは左翼的な論調になるのは致し方のないことかも知れないが
願望や思想を前面に押し出した虚構に近い情報が中立的、客観的という衣をまとい溢れる今日
常に現場を取材し、予断を許さずありのままの事実を伝えていた人物の逝去は
惜しみあまりあるものがあったと思う。
辛辣な政府やアメリカ批判を展開したが、決して軽薄安易な反米、反政府主義者ではなかった。
それゆえ彼が批判の対象としていたブッシュ大統領ですら弔意を表したのだろう。



話はややそれるがアメリカが傲慢なだけの国であるのならば、恐れることはない。
まして尊敬することもない。
だが、こうしたフェア精神の固まりのような人エネルギッシュな人間を生み出すアメリカは
やはり偉大な文化を持つ側面がある国と認めなければならないと思う。
自国をむやみに卑下するわけではないが、この点で日本は明らかに負けている。





遅ればせながら、氏の冥福を祈る。