在日魂


以前金村が、テレビの番組で引退した試合の最期の打席ことを
話していたのを聞いたことがある。
「金村さん、最期でしょ。ストレートですからバチッと打って最期飾って下さいよ。」
ってなことをキャッチャーに囁かれて、眼をうるうるさせて打席でたったら
投げられた球はフォークで、ショートゴロにされてしまった、と笑いながら語っていた。
本人は、嫌われていたとか、冗談半分でいっていたが、
寧ろ皆に好かれていたゆえにイジラレたのではないだろうか。
やんちゃで暴れん坊だけど、どこか憎めないかわいい奴
・・・金村義明の文章を読むと、そんな金村像を想像してしまう。

在日魂

在日魂

高校時代報徳学園で全国優勝して、
プロ入りし近鉄などで活躍した金村義明の自伝である。
在日として生まれ、貧乏な家庭に育ちながらも
まっすぐに生きた男の軌跡は、時に笑いあり、涙ありの起伏に富んだ物語だった。
なんで日本人に生んでくれなかったのかと母に詰め寄り
言葉のハンデをひっくり返し優等生だった少年時代
野球部の監督への付け届けがないばかりに背番号を変えられ
チョウセンと心ないヤジを受けた中学時代
槙原にメンチきった選抜の開会式や
奇跡の逆転で選手権で優勝した高校時代
近鉄に契約金値切られたり
パンチにスカGでプロの寮に入り、先輩から総スカンを喰らっり
様々に人間に出会い成長と悪行を重ねたプロ時代等々
良きにつけ悪しきにつけ
人を怨むことなく、まっすぐに生きる人間というものは、
どことなく気持ちがよく好感がもてる。
金村義明、結構いい奴かも知れない。