夢見さんのおすすめの中に、鷺沢萌の「酒とサイコロの日々」があって
その表紙の画の可愛さに惹かれ、近所の本屋で立ち読みしてきた。
上智大中退の才媛といえども、ギャンブルにハマればサイバラとそんな違いは
ないなぁというのが率直な感想で
知的で繊細な文章を書く直木賞候補作家が、悪いオヤジ連中にかかり、鴨ネギにされていく様に
盛者必衰の理を覚えてしまう。(合掌)
麻雀やチンチロリンでこさえた借金を苦にしていたわけではないだろうが
若くして自らの命を断った作家の供養の意味で「さいはての二人」を購入した。
在日、原爆二世、児童虐待、負け犬の失恋など、それぞれに重いチーマを扱った3つの小説は
文章の妙もあり、さわやかな印象が残った。
それは、これらの短編が、主人公の立場や境遇に同情を求めるものではなく
都会にどこにでもある寂しさを埋める愛情の物語だからではないだろうか。
児童虐待を扱った「約束」は、悲惨で陰鬱な展開なのだが
ボンボンの馬鹿息子と虐待される幼女の触れ合いに、心が暖まり
意外な結末に、この作家ならではの才能を感じさせる。
ただおしむらくは、物語を奇麗にまとめあげるあまり、パンチが不足気味なので
物語に深みを出すために、もう少し人間のグロテスクな面を描ければと思う。
この作家にそうした成長をつい願いたくなるのだが、
それは、すでに叶わぬものになっているー本当に残念なことだ。
何を儚んでこの作家逝ってしまったかはさておき
才能があれは、俺だって、と呟きながら、冥福を祈りたい。
絶望に効くクスリ―ONE ON ONE (Vol.4) (YOUNG SUNDAY COMICS SPECIAL)
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