関学vs立命

勝者に哀を、敗者に歓を


 京都大学アメリカンフットボール部元監督 藤村重美


この言葉は水野監督が京都大学のコーチに就任する際に、前任者の藤村氏から贈られた言葉である。
関西学生フットボールリーグのプレーオフ立命館関西学院大の試合を見終えて
真っ先に心に浮かんだのはこの言葉フレーズだっだ。


互いに6勝1敗で公式戦を終え、甲子園ボウル出場を賭けた両雄の対決。
激しく降りかかる雨も両チームの選手とコーチの熱い想いを消すことはできず、
その場にいた観客のみならず、ブラウン管を通じて見る者すら
引き込む迫力に満ちた試合内容で、
チームの選手が繰り返す激突の度に、
拳を握り心の奥底から熱い感情が噴き出すのを感じた。
フィールド間近でゲームをレポートをしていた河口正史
「学生最後の試合はみんな捨て身で戦うから激しくなる。今日は素晴らしい試合」と
技術的なコメントの多い氏にしては珍しく熱い感想を述べるほど
技術や戦術を超越し、魂と魂のぶつかり合いという形容が似合う試合だった。



1Q早々に14-0とされた立命館のディフェンス陣は、
序盤の混乱から立ち直り激しいタックルを関学の選手に浴びせる。
しかし、関学のQB河野、RBの田中はひるむことなく立命館の赤い壁に突進し、ゲインを重ねる。
立命は劣勢に回りながらも辛抱強く耐え耐え、
数少ないチャンスをオフェンスに託す試合展開となった。
立命のQB池野は、おりからの降りしきる雨に、パスのコントロールに苦しみながらも
執念でパスをヒットさせ同点に持ち込むと試合は動かなくなってしまった。


途中、いくつかのミスが両チームにでて、攻撃権が変わることもあったが
膠着した試合の流れは動かす、同点のままオーバータイムに突入する。
そのオーバータイムも三度に及び、
関学K小笠原のこの日3度目のミスキックで長い試合に漸く終止符が打たれたのだ。
彼が失敗した三度のキックのうち一度でも成功させていれば関学は勝利したであろうが
そのことで彼を責めるのは酷というものだ。
これほどの試合をタイブレークで決着をつける自体おかしいのだ。
決着がついた後、当然のことながら両チームの明暗は分かれた。
ブラウン管に映し出された関学選手の泣き崩れる姿を見た時
その胸中にあるものが容易に想像でき、私も涙を止めることはできなかった。


関学の主将が試合後インタビューで、涙を堪えながら
関学伝統DNAは、伝えられた。ただ甲子園を知らないだけ」と
応えていたのには、関学というチームを一年間支えてきたプライド、否、男の意地を感じた。
「たかがアメリカンフットボール、そんな馬鹿馬鹿しいもんやから
 命賭けてやってみようという気持ちになるんや。」
とは京都大学水野監督の弁だが、
関学は来年もそんな馬鹿馬鹿しいフットボールに命賭ける兵が集うことだろう。



勝者に哀を、敗者に歓を・・・。