関学が昨年の覇者立命館を破り優勝へ邁進しているのとは対称的に、
入れ替え戦出場が囁かれるほど低迷する京都
56回を数える伝統の一戦関京戦
関学に分があることは誰の目にも明白だった。
試合は、京都大ディフェンスの健闘が光るものの
前半は関学ペースで試合が進み、13-0で折り返した。


以前、京都大の選手がテレビ関係者に関京戦に望む心構えを訊かれ
「気持ちの入ったプレーをする」と答えたことがあった。
そのインタビューを知ってか知らずか、試合を中継したアナウサーはしきりに
「気持ちの入ったプレー」という修飾語を連発していた。
そして京都大学のディフェンスとRBの池上のプレーは正しく
気持ちの入ったという形容にふさわしいものだった。
身長164センチのRB池上が100キロ強の選手からタックルを受けても、前進を止めず
巨体の選手を引きずり1ヤード2ヤードと進むことがしばしばあったのだ。


前半、TDで先制された後、二回ほど自陣ゴール近くまで京都大学は攻め込まれたが
京都大学は驚異の粘りを見せる。
逆に関学は、攻め込んだ2回のシリーズともともホールディングの反則を犯し
フィールドゴールでしか追加点を奪えなかった。
どちらかのシリーズでタッチダウンをとっていたならば、
前半で試合は決していただろう。
だが、劣勢の中でも、京都大は、心を折ることを潔しとせず、勝利を諦めなかった。
自陣ゴール前の攻防で関学からホールディングの反則を引きだしゴールラインを死守したことが
結果としてごく小さな勝利の目を残すことになった。


後半早々、京都大の粘りが試合の転機を呼ぶ。
京都の攻撃で始まった後半、京都は最初の攻撃シリーズで得点をあげることができなかったが
パントリターナーに激しいタックルを浴びせ、敵陣の奥深いところで攻撃権を再び得る。
ビッグプレーからチャンスを掴んだ京都は、池上の吶喊を攻撃の軸にして関学ゴールに迫る。
京都はこのシリーズでタッチダウンを奪うために
三回しか許されていないないタイムアウトのうち二回を使って作戦を練った。
これは賭けというにはあまりにもリスクの大きい選択であったと思う。
何故なら、そこでタッチダウンを獲っても逆転はおろか同点にすら届かない。
リードされたチームが時間を止めるタイムアウトを、試合終盤に使えないということは
プレーの幅が極端に狭まり、圧倒的に不利になる。
にも関わらず、京都大はこの試合で初めて訪れた3Qそうそうのチャンスに
惜しみもなくタイムアウトを使った。
つまり、京都の水野監督は、このゴール前の攻防が勝負所と見て、試合を賭けたのだ。


67キロしかないRB池上はが、その指揮官の期待に応え
30キロ以上重い人間が並ぶ壁をぶち破りTDを奪う。
幸運にもこのTDによって京都は試合の流れを掴み、京都は捕まえたモメンタムを離さず
チームの勢いそのままに逆転する。
水野の監督の危険な賭けが勝機を呼び込んだといっていいだろう。
3Qの関学ゴール前の攻防が、京都にとって乾坤一擲の勝負だったと云える。
あの時点でタッチダウンを奪っても勝てる保証はどこになかった。
だが、指揮官はそこで決断して、針の穴に似た細い勝機の目を逃がすことをしなかった。
そしてそれを可能にならしめたのは、関学のミスや油断でもなく
京大選手の気迫のこもったひたむきなプレーだった。
テクニックやサイズではなく、勝負を決めるのはハート。
そんな陳腐な言い回しですら、恥ずかし気もなく言い切れる今年の関京戦だったと思う。


Nice game