novel
チャーリー・ワイス様 正直言って、なんとお礼の言葉を申していいのやら、皆目見当がつきません。ただ、こうしてペンを取っている間にも貴方が私たち親子に寄せてくれた特別のご厚情を思い、胸に熱いものがこみ上げてきます。モンタナはあなた方から頂いたボ…
フットボールである限り、勝敗は大事ではあるけれど、人間の命や、男の約束よりは大事だとは思わない。 タック牧田 チャーリー・ワイス様へ。 名門大学チームの監督就任おめでとうございます。 伝統というプレッシャーと日々戦われておられることだと思いま…
多くの飛行機に私の製造した部品が組み込まれたことを考え 罪悪感に近い感情に責め苛まれ眠れない夜が続いた。 資材不足から工程が停止した時は、 不謹慎なことだが心のどこかで安堵している自分がいた。 しかし、工程が動いている時は、全身全霊を傾注して…
説明会が終わり、技術将校から時間があるかと尋ねられた。 後は帰途につくだけであるから、多少なら融通が利くと答えたところ 近くにある陸軍熊谷基地へと誘われた。 私は、陸軍に航空部隊があることを聞いていたが、 陸軍の航空部隊が熊谷にあるとを不明に…
私は、目を閉じ透明な液体で満たした金杯に口をつけた。 刹那、私は嗚咽をこらえきれなった。 ただならぬ状態の私を見た家内は、体の加減が悪くなったのかと訝しみ訊ねた。 「違う。違うんだ。 若櫻・・・・・・。」 私は、それを云うのがせいいっぱいだった…
われわれ中島の技術者は国家の存亡ということで必死に飛行機を設計し生産してきた。 しかし、その飛行機により尊い若者の命が奪われたことは間違いのない事実である。 過去の飛行機を美化するようなことは決してするまい 中島飛行機技師長・小山悌 終戦から6…